日本地図を見ると、北海道の東側にサロマ湖という湖があるのに気づく。オホーツク海と繋がるか繋がらないかという薄い陸地を隔てた湖。特異なカタチをしている。小学生の頃から気になっていた地形だ。サロマ湖は、果たして海に繋がっているのか、いないのか。ちょっと大きな波が来れば、細長い陸地を越えて湖に海水が入り込んでしまうのではないか。そんな疑問を持っていた湖である。
そんなサロマ湖を有する佐呂間町で、まちづくりのワークショップが行われている。そのワークショップに参加してコメントして欲しいという依頼があったので、冬の佐呂間町へ行くことになった。北海道の東側の冬である。想像を絶する寒さであったことは言うまでもない。
サロマ湖は、想像していたよりも大きな湖だった。関西の琵琶湖、関東の霞ヶ浦に続いて日本で3番目に大きな湖だということも初めて知った。さらに驚いたのは、細長く続く陸地が人の手によって切られていて、そこから湖に海水が入り込んでいるということ。昭和20年代に、サロマ湖でホタテの養殖ができるように海水を入れたのだという。ホタテを養殖するためとはいえ、細長い陸地を人の手で掘削し、海水を湖に流し込んだのは思い切った決断だ。今なら環境アセスメントのプロセスで必ず問題になる行為だろう。
佐呂間町のワークショップは商工会の青年部によって行われている。まちづくりと言っても、まずは何をするのか考えようという段階だった。僕が伝えたかったのは、「誰かのためのまちづくり」ではなく「自分達が楽しいと思えるまちづくり」にしないと長続きしないということ。まずは「楽しいと思うこと」を「楽しそうに実施してみること」が大切で、その姿を見たまちの人達が参加したくなるような活動を展開することがまちづくりのきっかけになる。そんなことをお話した。
印象的だったのは、ワークショップが終わった後にメンバー全員と一緒にした食事のこと。オホーツク海に面した街ならではの豪快な海の幸は、これまでに目にしたことに無いような豪華さだった。ウニやイクラやホタテやカニというのは、きっとこんなふうに食べるべきものではないんだろうと思いながら、僕はどんぶりいっぱいの海産物を食べ続けた。いずれも佐呂間町で採れたものばかりなので値段はそれほど高くない、という話だったが、逆にそれほど贅沢な話は無いと僕は唸った。
佐呂間町には「おもてなし」の精神が息づいている。来客が食べきれないほどの料理を出してもてなすこと。その行為が自分達の尊厳に結びついていること。しばらく体験したことのない「もてなしの精神」を存分に感じることができた。東京や大阪では感じることのない種類の気持ちを味わうことができた。僕は佐呂間町が大好きになった。商工会青年部の人達もいい人ばかりだった。今度は夏に訪れてみたい。きっと風景も好きになることだろう。
山崎