夕方から、扇町インキュベーションプラザで講座を担当する。講座のタイトルは「近くの空き地に自分たちの公園を作ろう」。
公園を行政が整備して、その公園をまた行政が管理する。当たり前だと思われているこの方法だと、公園面積が増えれば増えるほど管理のためのお金が膨れ上がることになる。労働人口が増えて税収も順調に上がっていた時代なら、この方法も成り立っていたのかもしれない。しかし、これからの時代は少し勝手が違ってくるはずだ。労働人口は間違いなく減少する。税収が低い水準に移行することはほぼ確実である。となれば、これ以上公園の面積を増やして、管理費用を増大させるわけにはいかないだろう。
それでも公園が必要なら、僕らは自分たちで公園を作って管理していくほかない。その公園は、いわゆる官が設置する公園でなくてもいいだろう。公園っぽい空間だと感じられるような「みなし公園」でもいい。民設の公園もあり得るだろう。
そこで、今回の講座では参加者に自分たちが作りたいと思う公園のイメージについて話し合ってもらった。いろいろなアイデアが出たが、最終的には3つくらいのイメージに集約された。
■グリーンフラット
美術品を展示するために、できるだけ空間の装飾を減らした美術館の展示室。「ホワイトキューブ」と揶揄される無個性さを、今一度ポジティブに捉えなおして公園へと展開できないものだろうか。ホワイトキューブならぬグリーンフラット。できるだけ要素を減らした公園に、その場所を使いこなすためのキットの貸出しシステムを重ね合わせる。芝生やボードデッキなど、ごくシンプルな床の整備に留めた公園へ、椅子や枕やパラソルを貸し出すシステムを差し込む。貸し出すキットの種類によって、公園の風景はダイナミックに変化することになる。物品賃貸料の一部を公園管理費に充てることもできるだろう。
■情報発信公園
多くの人がインターネットを介して情報を得る時代。多くの情報を受発信できる反面、生身の身体にとって「手ごたえのある」情報は徐々に少なくなっているように感じる。例えば電線の地中化に伴う電信柱の撤去。さまざまな情報が無断で貼り付けられていた電柱が、街から少しずつ消えていく。手書き、印刷、走り書き、ワープロ書き、風雨にさらされた古さ、色紙、ガムテープ、その貼紙を読む人の風貌など。電柱の貼紙から得られる「手ごたえ」によって、僕らは情報の新しさや古さ、信憑性、緊急度、書き手の素性などを想像したものである。そんな「手ごたえ」を持つメディアとしての貼紙と、貼紙を支える電柱が街から消えている。そこで、地中化に伴って撤去された電柱を一ヶ所に集めて「電柱公園」を作る。グリッド状に並んだ電柱は、貼紙のテーマごとに色分けされる。同じ電柱に集まる人の間に新たな出会いがあるかもしれない。
■公園へのコンバージョン
都心型再開発が盛んなせいで、古いオフィスビルに空き室が増えていることは周知のとおり。オフィスビルを住宅や学校に用途変更するコンバージョンがじわじわと注目を集めつつある。この際、オフィスビルを公園にコンバージョンしてはどうだろうか。空き室を何部屋かつないで公園を作る。誰でも何時間でも過ごすことができる空間。片隅に残した部屋をカフェとして活用することもできる。林立する柱と窓からの木漏れ日に包まれて、ゆっくりとした時間を過ごすことができるオフィスビル内の公園。
公園へのコンバージョンに似た事例が、すでに東京で話題になっている。銀行の金庫室を農園へコンバージョンしたという事例。こんな事例を見ていると、僕らが考えていたこともあながち夢物語ではないと感じる。
2005年2月11日 Chunichi Web Press
地下金庫が農園に:大手町に1000平方メートル
山崎
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