塚本由晴さんの著作をいくつか読んだ。いくつか読んで、ふと思った。塚本さんが生み出すたくさんの言葉を、自分なりに整理しておくべきなのではないか。次々と増える「塚本用語」を単に並べて放置しておくのはもったいないのではないか。
塚本さんは多くの言葉を生み出す。「観察と定着」「環境ユニット」「都市の生態学」「やり方とあり方」「フラックスマネジメント」「空間の実践」「カスタマイズ」「リサイクル」「社会性」などなど。いま起きている状況を説明するために必要な言葉を、次から次へと作り出す。本人と話をしていても、著作を読んでいても、新しい言葉がどんどん生み出される。塚本さん自身の中では、相互に関係付いている言葉たち。ところが、僕にとってはランダムな言葉でしかない場合が多い。こいつはまずい。僕なりに塚本さんの言葉を整理してみる必要がある。
塚本さんが取り扱う言葉のスケールは、「都市スケール」と「建築スケール」と「空間スケール」という3つのスケールがある。本人はスケールで対象を切り取ることに抵抗があるようだが、ここでは言葉を整理するという目的のためにあえてスケールの違いを明確にしておく。
塚本さんの言葉に見られるもう1つの特徴。それは、都市や建築や空間を「形態の系」だけで論じるのではなく、常に「行為の系」とセットで語っていることである。「使い方」と「建ち方」、「やり方」と「あり方」など、形態と行為を同時に論じる言説をよく目にする。
■都市スケール
「社会性」や「マスターデザイン」という言葉は、都市スケールで語るときに塚本さんがよく用いる言葉である。都市を「行為の系」と「形態の系」からなる生態学として捉える視点も独特である。
■建築スケール
都市のスケールから建築のスケールへ接近するとき、建築とその周辺を視野に入れた「環境ユニット」や「ランドスケープ」という言葉が出現する。建築スケールにおいても、塚本さんは「使い方」と「建ち方」の2側面を同時に捉えていることが多い。「カスタマイズ」や「リサイクル」という言葉は、まさに行為と形態を同時に捉える視点の産物であろう。
■空間スケール
建築スケールから空間スケールへと目を移すとき、行為と形態は「やり方」と「あり方」という言葉に置き換えられる。そこで起きていることを観察し、観察した結果を建築に定着させること。流れ行くものの取り扱いをマネジメントすること。自らが主体的に空間へ関わること。「観察と定着」や「フラックスマネジメント」や「空間の実践」という言葉は、「空間の経験」を豊かなものにするための重要な考え方である。
言葉を整理することによって、今後塚本さんが生み出す言葉がどのスケールのどんな側面について説明しようとしているのかを把握しやすくなったような気がする。ランダムに置かれていた塚本さんの言葉が、僕の中で少し関係性を持ち始めている。これからも塚本さんの言説に注目していきたいと思う。
山崎
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