2007年5月14日月曜日

「strong concept」

中之島の中央公会堂にオランダの「NL Architects」とルクセンブルクの「Polaris」がやってくるというので、夕方から話を聞きに行く。

NLのアプローチは以前から気になっていた。入り組んだ駐車場の計画では、広告収入による建設費や維持費のマネジメントにも言及しているし、空からみると企業の広告になる空港併設駐車場では駐車すればするほどお金がもらえるシステムを提示しようとしている。つまり、カタチとナカミとシクミを同時に考えようとしているのである。

講演内容で面白いと思ったキーワードは「strong concept」。明確なコンセプトと、それを素直に表現したカタチ。この組み合わせが独特のアイデンティティを生み出し、見るものにインパクトを与えることになる。その結果、楽しそうな建築や空間が出来上がるのだが、実はその細部にはさまざまなストーリーが埋め込まれていて、実に良く考えられた建築になっているのである。「あれもこれもできます」というコンセプトではなく、「これです」という明確なコンセプトを打ち出しておいて、そのあとで「実はあれもこれもできます」というストーリーを説明する。強いコンセプトが持つ意味を改めて再認識したように思う。

もうひとつ共感したキーワードは「境界を越える」ということ。ヨーロッパで活躍する建築家らしく、あまり国境を意識せずにボーダレスな活動を展開していることが多いようだ。また、Polarisの2人は国境だけでなく専門分野の境界も越えて活動している。いわゆる建築だけでなく、都市計画や広告やイベントなど、都市や社会の問題を解決するためのツールを建築だけに限定しない。たまたま建築で解決できるものは建築で解決するというスタンスは、非常に共感できるものだった。

これからしばらくは「強いコンセプト」について考えてみたいと思う。特にランドスケープデザインにおいては、住民参加や生態系への配慮など、コンセプトの輪郭をぼやけさせるようなテーマやコンセプトが付着しやすい。油断するとさまざまな「重要なこと」をコンセプトに付けすぎて、結局何がしたいのか伝わらないことになりかねない。シンプルで強いコンセプトをどのように提示し、それをどうカタチにするか。そのことを考えてみたい。

ちなみに、NL Architectsの「A8ernA」というプロジェクトは、高速の高架下に連続した公園をつくるというプロジェクトで、ランドスケープデザインにも多くのヒントを与えてくれる内容になっている。水面を船で利用して、降り立った教会前広場で結婚式を挙げるというプログラムのつなぎ方など、カタチとナカミの組み合わせ方が面白い。

同じくNLの「Loop House」というプロジェクトは、住宅と庭(中庭と屋上庭園)との関係がよく考えられたプロジェクトである。

「Basket Bar」のプロジェクトも、バスケットボールコートとバーという2種類のプログラムを重ね合わせながら統合するという、ランドスケープと建築との関係を考えさせるものである。

NLの建築は、ランドスケープと建築との新しい関係を示唆するものが多いように感じた。しっかり調べてみたい建築家である。

山崎

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