隈研吾さんの「建築の危機を超えて」を読む。
本書は、隈さんが1977~87年(23~33歳)までに発表した文章をまとめたもの。冒頭から、「建築は悪である」ことが繰り返し述べられている。隈さんによれば、建築における悪は以下のとおり。
・建築自体があらゆる環境破壊の元凶であること。
・建築の施工から設計、そして評論に至るまでの広い領域で前近代的な談合体質が健在であること。
・建築産業全体が技術とも合理性とも遠い前近代的な斜陽産業であること。
さらに建築家に対する指摘は続く。痛快なものを以下に挙げる。
・建築家だけが空間をつくっているわけではない。建築家のつくるものだけが空間だと考えるのは建築家の思い上がりである。
・建築にあまり本気で取り組まないほうがいい。あまりむきになっていると、自分はこんなにむきになってやっているのにどうして金も女にも縁がなくて、一方高校のときの友達はくそつまらない保険会社なんかに勤めながらもなぜあんなに優雅にやっているのかと、醜い嫉妬に取り付かれる。
・いかにしたら建築批評独特のもったいぶって深刻で、そのくせ退屈で知的レベルの低いディスコースを解体できるか。
それでも隈さんは建築を愛している。
山崎
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