キャリーケースというのだそうだが、キャスターの付いたカバンを引いて歩く人が最近増えている。大晦日の今日は帰省客が多いので、それが当たり前の風景なのかもしれない。でも、少し前までの帰省客というのはみんな大きなカバンを抱えていたように思う。スーツケースを引いて歩く人はほとんどが海外へ行く人だった。
ところが、最近は盆や正月の帰省客が小型のスーツケースやキャリーケースを引いているのである。国内の出張へ出かける人もキャリーケースを引いていることが多い。新大阪から東京へ向かう乗客のほとんどがキャリーケースや小型のスーツケースを携えている。多い人になると2つのキャリーケースを引いて歩く。
なぜ、最近になってキャリーケースが人気を集め始めたのだろうか。
ひとつの理由は、その性能が向上したことにあるのだろう。軽量で丈夫な素材を使ったキャリーケースが増えているし、デザインも年々進化している。価格も手頃なものが多くなった。
キャリーケースを使いこなす人のイメージが一般に浸透しつつあることも理由のひとつだろう。ゼロハリバートン社やスチュワーデスといったイメージが、キャリーケースを引く人のイメージを作り上げているのである。
ノートパソコンという「重いけど固い容器に入れて持ち運びたいもの」が普及したことも、キャリーケースの増加に影響しているだろう。
それだけではない。実は、都市空間に段差が少なくなったこともキャリーケースの増加に影響している。バリアフリーやユニバーサルデザインが常識になりつつある昨今、車椅子利用者やベビーカー利用者のみならず、キャリーケース使用者にとっても「移動しやすい都市空間」が各所に出現し始めているのである。
試しにキャリーケースを引いてみた。手に舗装面の凹凸が伝わってくる。アスファルトよりも平板のほうが引きやすい。タイルの目地でケースがわずかにバウンドする。排水勾配に引きずられる。点字タイルに乗り上げる。。。地表面の変化が直接手のひらに伝わってくる。どうやら、キャリーケースは都市のペーヴメントを体感するための装置としても機能するようだ。
都市の表面を体感する装置=キャリーケース。より多くの人がキャリーケースを使用するようになれば、都市空間のバリアフリーについて発言をする人が増えるかもしれない。体感に基づいたバリアフリーへの提言。車椅子利用者とキャリーケース使用者が都市空間のペーヴメントについて語り合う日が来たら、都市はさらにアクセスしやすくなるだろう。
山崎
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