2004年12月14日火曜日

「異空間」

兵庫県立大学の赤澤宏樹さんが結婚したので、友人5人でささやかなお祝いをしようという話になった。もちろんこの時期なので忘年会も兼ねたお祝い会である。「お祝い忘年会」の会場は心斎橋の「恋のしずく」という居酒屋。地下2層分を使って、路地や小橋や縁側など「和の異空間」が作り込まれた店だった。

最近オープンする店は地下空間を活かしたものが多い。事務所の周辺にも数件の地下居酒屋がオープンした。先日、精神科のドクターと食事したのも地下の店だった。なぜ地下の店が人気なのだろうか。

地下空間が「日常の喧騒から逃れたい」という客の心理をうまく掬い上げているからだ、という説明も可能だろう。地下へ潜るという行為そのものが現世から距離を取る行為であり、だからこそ地下はレクリエーションのための異空間になりやすいのだ、という意見。これはいかにも正しそうだ。でも、異空間に浸りたいというだけであれば、商業ビルの中にもそれなりの店が存在する。必ずしも地下である必要は無い。

たぶんこういうことなんだろう。地下の店は「携帯電話の電波が届かない」という点において地上の店よりも「異空間」になりやすい。最近では、携帯電話が繋がらないことの言い訳が「地下」以外に見当たらないほど街中に電波が飛び交っている。携帯電話の電源を切るという行為には本人の意図が感じられる。でも、地下へ潜るという行為からは携帯電話の電波を逃れるという意図が感じられない。だから、電波が届かなかったことを咎められる心配も無い。僕らが誰からも束縛されずに楽しい時間を過ごそうと思えば、もはや地下へ潜るほか無いのである。

店の客がそのことを意識しているのかどうかはわからない。単に「落ち着く店だなぁ」と感じているだけかもしれない。友人との会話に集中できて満足しているだけかもしれない。しかし、その心地よさや満足感は「外部から電話がかかってこない」という状況に支えられているのである。この点においては、東京ディズニーランドとて「異空間」になりきれていないのである。

友人の1人が「お祝い忘年会」の集合時間に遅れた。店の場所がわからなかった彼は僕らに何度も電話したそうだ。彼からの電波が「異空間」に届かなかったのは言うまでも無い。

山崎

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