夕方から、都市再生機構の武田重昭さんと新宿で食事する。
ある事業における建築設計やランドスケープ設計の重要度は、どれほどのものなのだろう。そんなことを話し合った。答えがあるはずもない。だからこそ、長く議論することができる話題だった。
例えば自分が事業全体をマネジメントする立場になったとする。事業の目的、プログラム、財源、人材、組織、制度など、考えなければならないことはたくさんある。そのなかには、空間に関わる問題もある。事業を実施するための場所。事業主体の事務所となる建築物。その内装。ランドスケープ。それらは確かに大切な要素だし、それを設計する際にはじっくり検討すべきだろう。僕らはそういう仕事をしている。
ところが、翻って事業全体を見渡してみると、他にも重要な側面がたくさんあることに気づく。立派な空間が準備されても、そこで活躍する人材が確保できなければ事業は成り立たない。財源が確保できなければ事業はスタートしない。そもそも、そこで何をするのかというプログラムを確定させなければ、人材教育も建築設計も先へ進まない。
僕らは、ついつい盛り上がって「ランドスケープが社会を変えるんだ!」なんてことを口にする。ランドスケープサークルの中では、気軽に受け入れられる言葉なのかもしれない。しかし現実には、建築やランドスケープの設計が事業や社会全体に及ぼす影響というのはそれほど大きくない。
だからといって、プロジェクトマネージャーが偉くて、デザイナーは大した仕事をしていないなんて言うつもりはない。誰でも知っているとおり、各人が真剣に取り組んでいる仕事に優劣は付けられない。
ただ、デザイナーが事業全体の方向性を操作できるなんて考えないほうがいいと思うのである。事業全体のマネジメントに携わりたいのであれば、設計という作業を相対視しなければならない。
プログラム至上主義で有名なレム・コールハースは、すでに事業全体の方向性を左右する存在になりつつある。そんなコールハースが所員に対して「たかが建築の設計じゃないか。そんなに悩むことは無いだろう。」と言ったことがある。コールハースは、建築の設計がどうでもいい仕事だと思っているわけではない。プロジェクト全体をマネジメントしている時の自分自身が、過度に建築設計へ入り込まないほうがいいということを実感していたのだろう。
プロジェクトをマネジメントすることと、建築やランドスケープを設計すること。この両者を同時にこなすことは難しいし、もしかしたらやるべきではないことなのかもしれない。ライブドアの社長は六本木ヒルズを設計すべきではないし、六本木ヒルズの設計者は放送会社の株を買収すべきではないのである。
僕は、ユニセフパークプロジェクトのマネジメントとユニセフパークの設計を同時に進めようとしている。これは間違いなのかもしれない。だとすれば、僕はどちらを取るのだろうか。これは大きな問題である。
山崎
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