2005年3月12日土曜日

「グラハム・スティーヴンス」

午前11時から、六本木ヒルズで開催されている「アーキラボ展」を見に行く。大阪で行われたシンポジウムに出席したので、実際の展示物もぜひ見てみたいと思っていたのである。

建築マニアとしての僕は、「インスタントシティ」のグラフィックや「錯乱のニューヨーク」の表紙の原画などといった「実物」を目にして、かなり興奮してしまった。

一方、ランドスケープマニアとしての僕は、グラハム・スティーヴンスのインスタレーションビデオやヴィリリオ+パランの作品紹介ビデオに見入ってしまった。

グラハム・スティーヴンスの「砂漠の雲(1974)」プロジェクトはすごい。太陽光を熱に変えて空気を暖め、膨張した空気で風船を膨らませ、膨らんだビニールの筏(いかだ)を空に飛ばすというプロジェクトである。大きなビニール製の筏は、大気中を彷徨いながら砂漠に日陰を作り出す。さらに、大気中に蒸発する水分を集めて水を作り出す。作り出した水を貯めておけば、いざと言うときの飲み水にもなる。飲み水は、空飛ぶ筏によって別の場所へと届けられることもある。

ビデオに出てきたスティーヴンスの言葉のうち、印象的だったものは以下のとおり。

・大気は大地に代わる新しい資源である。
・自然の働きを理解し、利用すること。そこに環境との私的な関係が生まれることだろう。
・建築とは、空気の制御である。
・樹木などの植物は天然の空調装備である。

展覧会の図録によると、スティーヴンスは「砂漠の雲」プロジェクトの後、再利用エネルギープログラムなどを研究し始めたという。さらに、スペイン、ブルネイ、タンザニア、シナイ半島などにエコツーリズムの町を設計したそうだ。こんな人がいたとは驚きだ。スティーヴンスが最近どんなことに取り組んでいるのかが気になる。

パラン+ヴィリリオはジャン・ヌーヴェルの師匠にあたる。ヌーヴェルについて調べた際、パラン+ヴィリリオの「斜めの機能」についての文章を目にしたことがある。ビデオの中で、ヴィリリオは地形について以下のように述べている。

・土地の隆起/すなわち土地の傾斜が、人々の動き/すなわち人間の社会活動を引き起こし、ひいてはすべての人間文明の象徴である都市を形成するのである。
・歩みを自覚させるための傾斜。

「はじめに起伏あり」ということだろうか。ランドスケープデザインに携わるものとして、「斜めの機能」について一度しっかりと考えてみたい。

森美術館を出たのが午後5時。入ったのは午前11時だったので、合計約6時間もアーキラボ展を見ていたことになる。とても充実した1日だった。

午後9時から、整形外科医の永野稔晃さんと新宿の「叙々苑」という店で焼肉を食べる。この店のタン塩は妙に美味しかった。大阪にもこんな店が欲しいものだ。

永野さんは4月から複数の大学で仕事をすることになるという。整形外科の実務と研究を両方こなすことのできる環境は非常に羨ましい。4月からの1年間は、僕もそんな環境を構築するためにいろいろ努力してみたいと思う。

山崎

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