夕方から「自然・環境概念の系譜」に関する研究会に出席する。兵庫県立大学の中瀬勲さんが座長を務める研究会である。今回のゲストスピーカーは、武庫川女子大学の角野幸博さん。
■ 角野さんの話で面白かったのは以下の点。
・都市や集落の形態を見ると、その時代/地域の環境観がどんなものだったのかを読み取ることができる。
・アフリカの集落、城壁都市、バロックの都市、日本の城下町、中国の都市、バリ島の集落、植民都市など、それぞれの都市や集落には独特の環境観があった。
・クラッセンのアーバンサイクル仮説では、都市はどのようなものであっても「都市化」→「郊外化」→「逆都市化」→「再都市化」というサイクル経て成長と衰退を繰り返すとされている。
・アーバンサイクル仮説の各段階において、自然・環境概念がどう変化してきたのかを調べてみると面白いだろう。
・かつては都市の「全体」性について論じる人がいたが、最近では「部分」についての言説しか見あたらない。しかし、都市の全体性を語る必要がなくなったわけではないだろう。
・丹保憲仁さんは、日本の人口は4000万人が限界ではないかと言っている。現在の人口をいかに減らしていくのかを考えるべきである。
・人口が減少するとき、自然に戻さなければならない集落や都市が出てくるかもしれない。そのときに、周辺の人はどんな負担を強いられるのか、それに対して我々は何を補償できるのか。
・受益者負担に関わる仕組みは成立しているが、損失者負担に関わる仕組みはまだ出来上がっていない。
・人口減少の都市計画について言えば、今のところ土地を再配置して「自然に戻す場所」と「人が住む場所」を整理していく考え方が主流である。
・人口が減って空き家や空き地が増えるとすれば、放っておいても緑は増えるのではないか。自然に戻すために労力や税金を使う必要はあるのだろうか。
ここでも人口減少が話題に上った。郊外都市を安楽死させる方法については、まだまだ検討の余地があるように思う。空いた場所を自然へ戻すのに税金を投入すべきかについても議論の予定があるだろう。自然を公共財産として位置付けられれば、それを復元するのに税金を使うのは妥当なことだと言えるかもしれない。しかし、まだ「自然は公共財産である」という世論が高まっていないとすれば、他に税金を使って自然を回復させる理由は見あたらない。
放っておくのか、自然に戻すのか。そのことを考えるとき、次の2点を整理する必要があるだろう。放っておくとどんなまずいことが起きるのか。そして自然に戻すとどんなメリットが得られるのか。
郊外住宅地の現状を把握するのと同時に、空き家や空き地を自然に戻す理由を明確にしておく必要がありそうだ。
山崎
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