2005年1月16日日曜日

「マイナスのデザイン」

ユニセフパークプロジェクトのファシリテーター数名と、ユニセフパークの建設予定地へ行く。必要な施設容量を現場で検証するのが目的である。

現在設計を進めている施設の規模は適切なのか。配置に無理はないか。開口部分の方角は正しいか。窓から魅力的な風景を取り込むことができているか。施設を使うことになるファシリテーター達とともに、僕が設計している施設の妥当性を現場で検証した。

今回検証した施設は2種類。約30m四方のユニセフパークハウスと約10m四方の宿泊棟である。ユニセフパークハウスは、ユニセフパークの核となる施設であり、展示機能や事務所機能を持つ。宿泊棟はファシリテーターや子どもが宿泊するロッジであり、合計12棟建てる予定だ。

その他、屋外展示エリアや木陰広場、森の作業エリア、木材切り出しエリアなどの現場を調査した。

施設の大きさを体感するために、長さを測った赤いビニール紐を竹の棒に結び付けて原寸大の施設外形を示した。ユニセフパークハウスの敷地は棚田3枚分を占めるため、1.5mの段差が2つあってビニール紐を渡しにくかった。ススキやイタドリと3時間ほど格闘した後、何とかユニセフパークの外形を赤いビニール紐で示すことができた。施設内部から見える風景や、施設を周辺から眺めた時の見え掛かりなど、いろいろなことが検証できた。

約10m四方の宿泊棟は規模が小さいため、すぐに赤いビニール紐を張り巡らすことができた。宿泊棟の中で実際に寝てみることによって、ベッドの位置や天窓の必要性、窓から見える風景、斜面地への張り出し方などを検証することができた。

その他、屋外展示エリアや木漏れ日の広場、森の作業エリアや木材切り出しエリアの現場を確認した。いずれも荒廃した里山で林床に光の入らないような暗い場所だった。整備の際、必要に応じて樹木の伐採が必要になるだろう。

ユニセフパークの平面図は、通常と違った表現になりそうだ。荒廃した里山は樹木間の距離が詰まりすぎている。そんな場所に木漏れ日の広場を作ろうとすれば、2本に1本の割合で樹木を伐採しなければならない。森の作業エリアでは、3本に1本の割合で樹木を伐採して各人の作業スペースを確保しなければならない。木材の切り出しエリアは、森へ立ち入ることができるように4本に1本の割合で樹木を伐採する必要がある。

残す樹木の密度を指定することによって、それぞれの空間を作り上げる。樹木を「間引く」ことによる空間のデザイン。平面図は残す樹木の密度を示した模式図のようなものになるだろう。ちょうど、木片から仏像を掘り出すように、荒廃した里山から公園を掘り出すような作業になるはずだ。

間引いた樹木は一ヶ所に集めて、子ども達が遊具を作る際の材料とする。竹材は宿泊棟のルーバーとして使う。緑色から黄色、そして茶色へと変化するルーバー。宿泊棟は季節によってその表情を変えることになるだろう。そして1年に1度、茅葺屋根の葺き替えのごとく宿泊棟のルーバー交換が行われる。

敷地の要素を間引くこと。周辺にある材料を組み替えること。不必要な施設を作らないこと。ユニセフパークの設計を通じて、「マイナスデザイン」の可能性と限界性を探ってみたいと思う。


ユニセフパークハウスのボリュームスタディ


宿泊棟のボリュームスタディ

山崎

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