2006年3月15日水曜日

「歩いて暮らす街」

かつて、我々studio-Lが「環濠生活」という冊子を通じて堺市の旧環濠地区に対して行った提案は「歩いて生活する街」だった。旧環濠地区に暮らす人の「生活時間」を調べ、街を歩きまわれる時間がどれだけあるのかを明らかにした。また「生活領域」を調べ、日常生活で歩いている距離がどれだけ狭いのかを明らかにした。

その上で、歩くきっかけとして「環濠動物園」というテーマを設定し、旧環濠地区内で見ることができる動物の置き物をすべてプロットした。家の前庭や出窓、ショップの入口や遊具広場など、旧環濠地区内のあらゆる場所にある動物の置き物をすべて地図上のプロットし、それを生活者に紹介することによって少し寄り道する経路を増やそうというのが狙いだった。

こうしたテーマに基づいて、旧環濠地区内に歩行者用の空間を増やすことを提案した。なかには生活者が沿道の合意を形成してアスファルトを勝手にはがしてしまえばいい、という提案もあった。ヒートアイランド現象の軽減と水源涵養機能の復活を意図したアスファルト剥がしプロジェクトだった。

旧環濠地区内に歩行者空間が広がれば、現存する駐車場は少しずつ必要なくなるだろう。必要なくなった駐車場を広場に変えていくことも提案した。コインパーキングのアスファルトを剥がして市民農園に変える「コインファーム」。コインファームに供給する堆肥を集約的に作り出す「コンポストパーク」。環濠の水質を浄化するための「汐入公園」。各地で剥がされたアスファルトを蓄積して小高い丘を作る「ガラ公園」。駐車場が減ることによって、個性豊かな広場や公園が増えることを夢みた提案だった。

そんな夢のような提案を、しかしゆっくりと実現している都市があることを知った。デンマークのコペンハーゲン。40年かけて中心市街地から自動車を排除し、歩行者空間を増やし、駐車場を広場に変えている。300円程度で借りられるレンタル自転車の駐輪場を増やし、歩行者や自転車利用者を中心とした市街地形成を目指している。

コペンハーゲンも堺も、かつては世界レベルの貿易港を抱える港町だった。いま、コペンハーゲンはアーバンデザイナーであるヤン・ゲールの助言のもと、新しい街に生まれ変わりつつある。政令指定都市になる堺はどうか。世界的な自転車メーカーであるシマノを有する堺市が中心市街地でできることは、まだまだあるように思う。

山崎

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