関わっているプロジェクトの工場予定地を視察する。埋立地に建設が予定されている工場敷地には、海に沈める前のテトラポッドが並んでいた。地上に並ぶテトラポッドは、下手なパブリックアートやランドアートよりもインパクトのある風景を作る。そこには人の心に擦り寄らないすがすがしさがある。ぶっきらぼうな風景とでも言おうか。ぶっきらぼうだからこそ、そこに立つ人を際立った存在にする。土木の景観が持つ独特の心地よさである。一緒に現場を視察した忽那裕樹さんの姿も、ぶっきらぼうな風景のなかでひときわ印象的なシルエットを作り出していた。
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地上に並ぶテトラポッド
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写真を撮る忽那裕樹さん
その後、那智の大滝を見に行く。滝の近くにはマイナスイオンがたくさん発生していて、その場にいるだけで癒されるという。どうも胡散臭い話だ。本当にマイナスイオンなるものが人を癒すのであれば、日本一落差のある那智の大滝は究極の癒し空間になるはずだろう。
実際、那智の大滝は巨大な癒し空間だった。大量のマイナスイオンが発生しているのかもしれない、と思える空間だった。その場所に立つと、不思議と心が落ち着くような気もした。土産物を売る巫女さんが居眠りしているのを責める気持ちにもなれなかった。日本一マイナスイオンに包まれた職場である。「しっかり働け」というほうが無理なのである。
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那智の大滝
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居眠りする巫女さん
昼に食べた「めはり寿司」は美味しかった。しょうゆ漬けにした野沢菜をおにぎりに巻いたもので、農家の人が畑仕事の途中で食べたものだという。食べるときに大きく口を開いて目を張ることから「めはり寿司」という名前が付いたそうだ。ご飯と漬物を同時に食べることができる上、米で指先が汚れることもない。なんとも合理的な食べ物である。
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めはり寿司
帰りに妹島和世さんが設計した熊野古道なかへち美術館に寄る。半透明のガラスに覆われた小さな美術館である。晴れた日にはガラス面の反射光と室内からの透過光が入り混じって、周辺の風景から際立つ建築になることだろう。僕が見に行ったときは曇り空だった。雨も少し降っていた。そんな天候のなか、なかへち美術館は予想以上に周囲の風景へと溶け込んでいた。晴れれば周囲から際立ち、曇ったり雨が降ったりすると風景に溶け込む美術館。好感の持てる建築である。
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熊野古道なかへち美術館
山崎
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