午前中は海士中学校の先生方と打ち合わせ。出前授業の内容などを説明するとともに、中学校内部を見せていただいた。
午後から全校生徒を集めて出前授業。講師の西上を中心に「中学校を使いこなそう!」というテーマでワークショップを行った。出前授業のコンセプトは「サステイナブル」。持続可能であることをどのように中学生へ伝えるのか。
エコだったり持続可能だったりすることは、別に学校をエコなものに改修したり、ソーラーパネルや風車を設置したりしなければ達成できないことではない。第 一に、今使っている学校をどれだけ長く使い続けることができるのか。このことがエコでありサステイナブルにつながるのである。それは学校建築というハード な面に起因することではなく、学校を使っている生徒や教職員に求められるスキルに起因することである。つまり、少々不便な点があったとしても、学校を使い こなすスキルさえ身につけていれば、その都度アイデアを振り絞ってうまく使いこなすことができる。乗り切ることができる。その繰り返しが、結果的に建築物 を長持ちさせ、解体にかかる費用やエネルギーを省くことにつながり、新築したり改修したりする費用やエネルギーを省くことにつながる。そう考えた。
そのスキルを少しでも高めてもらおうと、中学生たちをチームに分けて学校内を歩き回って、普段の使い方とは違う使い方を提案してもらった。「こんな風に使えるんじゃないか」というアクションを写真に撮って、それを発表し合うのである。
中学生たちは、普段使っている学校を別の方法で使いこなすということで、最初は戸惑っていたが、どう使っても先生からお咎めがないことを確認するとさまざ まに使いこなし始めた。運動場に倒してあるサッカーゴールのネットをハンモック代わりにして昼寝する生徒や、廊下をボーリングのレーンに見立てて遊ぶ生 徒、階段の踊り場に恋人と2人きりで話合える場所を作る生徒、屋上に椅子を並べてサンデッキを作る生徒。実にさまざまな「使いこなし方」が見られた。
サステイナブルやエコロジカルという言葉を使って新たな公共事業を生み出そうとする動きがある。このこと自体の是非を問うつもりはないが、専門家が「至れ り尽くせり」なデザインで解答を与えることによって、利用者を「いつも誰かがそれを解決してくれるだろう」という他人任せな態度にさせてしまうのは良くな い。ましてや中学校をエコロジカルに改修するにあたって、中学生までを「他人任せ」な人間に仕立て上げてはまずい。まずは自分たちが学校を使いこなすこ と。そして「この学校はこのままでもまだまだ使える」という意思を表明すること。使う側のスキルを上げることなく器だけを新調しても、数年後には同じ問題 が表面化するのだから。
山崎
2007年8月20日月曜日
2007年8月18日土曜日
投入堂
島根県の隠岐に海士町という町がある。島根県の境港から船で3時間の沖合いに浮かぶ島だ。海士町はさまざまな取り組みによって多くの行政体から注目されている町である。その取り組みのひとつに「AMAワゴン」というものがある。海士町からマイクロバスを出して上京し、日本各地の若者を拾いながら海士町まで戻ってくるのである。拾われた学生たちは海士町の中学校で出前授業を行い、都市部の大学生と島の中学生との交流を促進する。東京の一橋大学の学生たちが考え出した仕組みだという。
studio-Lの面々が今回の出前授業を担当することになった。出前授業の講師役はstudio-Lの西上。スタッフ総出でこれをサポートする。また、スタジオに関わる学生も多数海士町に乗り込む。
どうせ島根県まで行くのなら、1日早く出発してどこか寄り道しようという話になった。そういえば、年度末の仕事を終えて以来どこにも出かけていない。社員旅行のつもりで寄り道するのも悪くない。そんな話で寄り道先に選んだのが三徳山の投入堂。急峻な崖に作られたお堂だ。これを世界遺産にしようという動きもあるらしい。以前から見に行きたいと思っていたお堂である。
午前8時に大阪を出て、途中いくつか寄り道しつつ、三徳山に付いたのは午後3時。さっそく山を登りに行く。この山が思いのほか急峻で、歩けど歩けど投入堂にたどり着かない。かつては修行僧が修行のために使っていたルートだというだけあって、本気で山を登らなければたどり着けないお堂だった。1時間半ほど山登りした後に、崖に絶妙なバランスで収まる投入堂を拝観した。信じられないようなバランスである。よくこれまで崩れ落ちなかったな、というのが最初の感想。少し強めの地震が起きれば、いとも簡単に崩れ落ちて手前の崖を滑り落ちていくようなお堂である。場所の選び方やお堂の構造や材料の選定など、どれほど考え抜けばこうした建築物が建てられるのかと、ただただ感心するばかりである。
しかし、しばらくすると別の考え方が脳裏をよぎった。ひょっとしたら、日本中にこうした「きわどい」お堂はいくつも建てられてきたのかもしれない。いつの時代にも、ぎりぎりの場所にお堂を建てる修行があり、極限に調整する修行僧がいたのだろう。しかし、そのほとんどは風水害や地震などによってもろくも崩れ去った。いま目にすることができるのは、奇跡的にこれまでいかなる災害にもあわず、修復を繰り返してその姿をとどめているわずかな生き残りではないか。建てる場所やお堂の構造について特別なことを考えたのではなく、星の数ほど建てられたお堂のなかでたまたま災害にあいにくい場所に建ったのがこのお堂だったのではないか。そんなことを考えた。
いくら優秀なお坊さんや大工さんが集まったとしても、1000年や2000年先まで残るような崖に建つお堂を「計画的に」つくることは不可能だろう。このお堂は、何百、何千と作られた「きわどい」お堂のうち、たまたまどんな災害にもあわなかった奇跡的なお堂なのかもしれない。
ややダーウィニズムに過ぎるかもしれないが、そんなことを考えながら三徳山を下山した。
山崎
studio-Lの面々が今回の出前授業を担当することになった。出前授業の講師役はstudio-Lの西上。スタッフ総出でこれをサポートする。また、スタジオに関わる学生も多数海士町に乗り込む。
どうせ島根県まで行くのなら、1日早く出発してどこか寄り道しようという話になった。そういえば、年度末の仕事を終えて以来どこにも出かけていない。社員旅行のつもりで寄り道するのも悪くない。そんな話で寄り道先に選んだのが三徳山の投入堂。急峻な崖に作られたお堂だ。これを世界遺産にしようという動きもあるらしい。以前から見に行きたいと思っていたお堂である。
午前8時に大阪を出て、途中いくつか寄り道しつつ、三徳山に付いたのは午後3時。さっそく山を登りに行く。この山が思いのほか急峻で、歩けど歩けど投入堂にたどり着かない。かつては修行僧が修行のために使っていたルートだというだけあって、本気で山を登らなければたどり着けないお堂だった。1時間半ほど山登りした後に、崖に絶妙なバランスで収まる投入堂を拝観した。信じられないようなバランスである。よくこれまで崩れ落ちなかったな、というのが最初の感想。少し強めの地震が起きれば、いとも簡単に崩れ落ちて手前の崖を滑り落ちていくようなお堂である。場所の選び方やお堂の構造や材料の選定など、どれほど考え抜けばこうした建築物が建てられるのかと、ただただ感心するばかりである。
しかし、しばらくすると別の考え方が脳裏をよぎった。ひょっとしたら、日本中にこうした「きわどい」お堂はいくつも建てられてきたのかもしれない。いつの時代にも、ぎりぎりの場所にお堂を建てる修行があり、極限に調整する修行僧がいたのだろう。しかし、そのほとんどは風水害や地震などによってもろくも崩れ去った。いま目にすることができるのは、奇跡的にこれまでいかなる災害にもあわず、修復を繰り返してその姿をとどめているわずかな生き残りではないか。建てる場所やお堂の構造について特別なことを考えたのではなく、星の数ほど建てられたお堂のなかでたまたま災害にあいにくい場所に建ったのがこのお堂だったのではないか。そんなことを考えた。
いくら優秀なお坊さんや大工さんが集まったとしても、1000年や2000年先まで残るような崖に建つお堂を「計画的に」つくることは不可能だろう。このお堂は、何百、何千と作られた「きわどい」お堂のうち、たまたまどんな災害にもあわなかった奇跡的なお堂なのかもしれない。
ややダーウィニズムに過ぎるかもしれないが、そんなことを考えながら三徳山を下山した。
山崎
2007年8月12日日曜日
2007年8月9日木曜日
21cafe
夕方から21cafeでお話する。いつもお世話になっている山納さんの誘いで、大阪21世紀協会が主催する21cafeなる会合で僕の活動を紹介させてもらうことになったのだ。一緒にお話いただいたのはアートアンドクラフトの中谷ノボルさん。
この会合は非公開なものらしく、話を聞きに聞きに来てくれた方々もかなり限られた面々。名刺交換させてもらって驚いたのだが、会社の重役さんや新聞社やテレビ局の偉い人ばかり。僕の話が何の役に立つのかほとんど理解できないまま、これまでの活動を紹介させてもらった。
一緒にお話いただいた中谷ノボルさんは、活動を情報発信するのがうまい方だ。ウェブにしても紙にしても、気の利いたコピーとオシャレなグラフィックで自分たちの活動をうまくPRされている。学ぶべき点が多い。一方、僕らの活動は自分たちが楽しければいいという向きが強すぎて、ともすれば排他的になりがちな状態。情報発信もうまくできていない。反省すべき点が明確になった日だった。
交流会では、メディア関係の方々に情報発信の方法などについて教えていただいた。今後は、自分たちの活動を他人が理解しやすいように整理して、しかるべきタイミングと媒体でしっかり情報発信したいと思う。まずは自社のホームページをしっかり作らねば。。。
山崎
この会合は非公開なものらしく、話を聞きに聞きに来てくれた方々もかなり限られた面々。名刺交換させてもらって驚いたのだが、会社の重役さんや新聞社やテレビ局の偉い人ばかり。僕の話が何の役に立つのかほとんど理解できないまま、これまでの活動を紹介させてもらった。
一緒にお話いただいた中谷ノボルさんは、活動を情報発信するのがうまい方だ。ウェブにしても紙にしても、気の利いたコピーとオシャレなグラフィックで自分たちの活動をうまくPRされている。学ぶべき点が多い。一方、僕らの活動は自分たちが楽しければいいという向きが強すぎて、ともすれば排他的になりがちな状態。情報発信もうまくできていない。反省すべき点が明確になった日だった。
交流会では、メディア関係の方々に情報発信の方法などについて教えていただいた。今後は、自分たちの活動を他人が理解しやすいように整理して、しかるべきタイミングと媒体でしっかり情報発信したいと思う。まずは自社のホームページをしっかり作らねば。。。
山崎
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