白砂伸夫さんから自身の作品集を頂いた。白砂さんの仕事は本当に多岐に渡っているので、いつもその全体像が把握しきれないでいたのだが、作品集を見せてもらってようやく少しそれが把握できてきたような気がする。
それにしても、仕事の種類もいろいろだし、現場も日本全国(世界各地)に点在している。誰もが思うことだが、多種多様な仕事をどうやって手に入れるのか理解できない。しかも、どうやら白砂さんは一切「営業活動」というものをしないらしい。先日、その秘訣について少しお伺いしたのだが、極言すれば「人とのつながり」というのが重要なようだ。民間の仕事も公共の仕事も、社会的に重要な立場で活躍している人とのつながりから発生する。そういう人といかに出会って、仲良くなって、仕事を依頼されることになるのか。ここに、白砂さん独特の技術(性格?)が隠されている。ただし、同じやり方で僕が仕事を依頼されるかというと、きっとそうならないだろう。自分の性格や持っている武器に応じた仕事のつくり方というのがあるんだ、ということを実感する。
多岐にわたる仕事は、大阪府、京都府、滋賀県、鳥取県、石川県、静岡県、神奈川県、東京都、山口県、高知県の四万十川上流、鹿児島県の出水市、屋久島と、日本各地に散在する。さらにベルギーやスリランカでの仕事もある。1991年に自身の設計事務所を立ち上げてから作品集が2003年に出版されるまでの12年間に、これだけ多様な土地で多様な施主を相手に仕事をしているというのは驚きである。
作品集に掲載された数々の作品のなかで、僕が好きなのは「四万十古道の再生」と「スリランカのピースセンター」である。四万十古道の再生は、作り手が誰なのか、何を主張したかったのかが、ほとんどわからないくらいに風化していきそうなデザインが微笑ましい。白砂さんが言う「ピュシスを呼び覚ます」デザインに見える。スリランカのピースセンターは、その施工に世界中からボランティアが集まったというのがすごい。素材の調達は地域を熟知している僧侶に協力してもらっているという。その結果できあがった素朴さが、好ましい「土地らしさ」をつくりだしている。
2003年以降、白砂さんはさらに多様な施主と知り合い、世界各地で仕事をしていると聞く。2013年ごろには、そうした最新作をとりまとめた作品集をもう一度出版して欲しいものである。
山崎
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