ペットボトルのデザインを依頼された。コンビニエンスストアなどに並ぶペットボトルをデザインすることによって、店内のランドスケープが変わるのであればそれも僕の仕事だろうと思って引き受けた。実際にスタディを始めてわかったことは、ペットボトルのデザインが持つ奥深さ。なかなか面白い仕事だ。
デザインの参考にするため、世界中のペットボトルについて研究し始めた。もっとも有名で美しいとされているのがロス・ラヴグローブ氏のデザインした「Ty Nant」というミネラルウォーターのボトル。確かに驚くべき美しさとグリップと弾力構造を兼ね備えてたボトルだ。
さらにいろいろ探してみると、台湾にこれとそっくりなミネラルウォーターがあることを発見。早速入手してみる。品名は「My Water」。ラベルが楕円形なところも丁寧に真似してある。並べてみるとリブの入り方が微妙に違うことがわかる。そのため弾力性が違っている。台湾の「My Water」のほうがやわらかくて頼りない。グリップも悪く、油断すると手から滑り落ちてしまいそうだ。一方、本家「Ty Nant」はさすがに計算しつくされた構造で、しっかりした強度を保ちながらボトルの握りやすさも実現している。
ところでこの複雑な形は、不定形な水のかたまりをイメージしたものだと言われている。ミネラルウォーターのかたまりを持ち歩いているような気分にさせるペットボトルなのである。水は不定形でやわらかく、手のひらから零れ落ちていく存在だ。その意味では、きっちりデザインされた「Ty Nant」よりも「My Water」の頼りなさのほうが「水」っぽいのかもしれない。
実際、僕は「My Water」のボトルを2回落としたことがある。
「My Water」と「Ty Nant」
山崎
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