2010年5月24日月曜日

6/19の「いま、建築に何が可能か」

6月19日に大阪の梅田にて「いま、建築に何が可能か」というシンポジウムをやる。そのコーディネートを担当する立場として、6組/人の出演者たちに以下のようなことを問おうと思う。

・日本の人口が減り始めた。2015年には世帯数も減り始める。
・新設の公共事業費は2020年にゼロになる。つまり博物館も美術館も新設は発注されない。
・住宅の新築着工数は100万戸から50万戸に減る。
・建設業と選挙の票が結びついていた時代が終わった(民主党政権)。
・上記を踏まえると、いまの建設業の不況は一次的なものだと考えるのは楽観過ぎるのではないか。
・今後の国内設計案件数は、減ることはあっても増えることはない。
・とすれば取るべき態度は以下の3点。(1)海外で設計人生を歩むか、(2)国内で設計以外の仕事にスキルを応用するか、(3)減り続ける国内設計案件を取り続けるよう努力するか。
・いずれにしても、建設業界が急速に小さくなっていくので、建築家の発言力が相対的に小さくなることは間違いない。二川さんの言うとおり、丹下さんや磯崎さんの時代に比べて建築家の発言は日本社会に影響を与えなくなっている。
・そういう社会で従来型の建築を延長させたいのか、それとも建築のスキルを別のことに活かしたいのか。
・上記3つの選択肢で言えば、ぼくは(2)と(3)に興味がある。みなさんにお尋ねしたいのは、(2)で生きようとするならそれはどんな仕事なのか。そのための戦略は何か。(3)で生きようとするならどんな建築を設計して生き残ろうとしているのか。それは人生を賭けてやる意味のある仕事なのか。
・(2)にしても(3)にしても、道が険しいことは確か。どう立ち向かおうとするのか、その覚悟と戦略が知りたい。

以上のことをメールにて出演者のみなさんにお送りした。どんなプレゼンテーションが聞けるのかが楽しみである。

→シンポジウム「いま、建築に何が可能か

2010年5月20日木曜日

architecture for humanity TOKYO が取り組むこと

サンフランシスコを拠点に活動する建築系のNPO「architecture for humanity」は、世界中に散見される社会的な課題に対する建築的な解決策を集め、実際に当該課題で悩む地域にそれらの解決策を提供しています。また、寄付者や投資家を募って、その解決策に予算をつけています。そのため、定期的にテーマを設けたコンペを開催し、集まった500以上のアイデアの中から優秀なものをデータベース化しています。データベースは、災害、難民、病気、犯罪、水不足などテーマごとに検索できるようになっており、当該地域から自分たちに適したアイデアを探し出して利用することができます。これによって災害からすばやく復旧できたり、多くの命を助けたりしています。

「architecture for humanity」の設立者であり代表でもあるキャメロン・シンクレアは、こうした建築の社会貢献について日本でも積極的な取り組みが始まることを期待しています。キャメロンの友人である我々は、建築の力を社会的な課題の解決に利用しようとする彼の取り組みに賛同し、その東京支部である「architecture for humanity TOKYO(afhT)」の設立準備会を組織しました。

afhTは、以下のことに取り組む予定です。

・architecture for humanity が主催するコンペにおける日本からのエントリーを増やす。
・寄付文化や税制上の利点がない国でも可能な人道支援に関する経済学の原型をつくりだす。
・オフラインの人たちとつながる人道支援の手法を開発する。
・社会の課題に取り組むデザイナーの活動を日本語で紹介する(翻訳/出版)。

afhT設立準備会は、発起人である山崎亮(studio-L)と西山浩平(エレファントデザイン)と近藤佳奈がそれぞれできることを持ち寄って上記の取り組みを進めます。当面はこの3名が中心となってafhTを立ち上げるものの、仲間が増えてその後の活動を引き継ぐ人が現れた場合は順次役割を交代するつもりです。


※その後、AfH本部の日本での活動体制が整ったため、Architecture for Humanity TOKYO設立準備会が行ってきた日本のAfHの窓口の役割等をすべて本部に移行しました。今後AfHに関するお問い合わせ等はこちらのホームページに記載されている連絡先までご連絡ください。
(追記:2011年6月17日)

2010年5月18日火曜日

シンポジウム 『いま、建築に何が可能か』 開催

「これまでの建築」も引き継ぎつつ、独自に新しいことにチャレンジしようとしている建築家たちがいます。その新しいことを模索しているさまを、若い人たちに見てもらいたい、と思っています。建築の王道は相変わらず変わらない路線を行くだろうけど、それがいつか王道とはいえないくらいのパイになることは明らかです。だからこそモダンとかポストモダンというリニアなラインから逸脱するように見える模索も、それが新たな王道を築くことに繋がるかもしれないのです。それがいいことか悪いことかというよりも、みんなに求められる仕事をしようと真摯な態度を取るのなら、「でもやっぱり俺は建てたいぜ」と駄々をこねるのではなく、そのとき建築に何が可能かを考え、模索し、実践することが重要なのではないか、と思います。(studio-L

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- いま、建築に何が可能か -

これから僕らは何を“設計”するのか?
高度経済成長期までは建築分野の“設計”の対象は明確だった。
しかし、日本は2005年より人口減少時代に突入した。
2020年には新設の公共事業がなくなり、民間の住宅着工数も100万戸から50万戸に減ると言われている。
床は余り、「建てること」が無条件で求められる時代ではなくなるのだ。
これから建築を志す人は何を“設計”するのか?
これまでの建築分野の“先人”は、もはやロールモデルとして参考にならない。
建築の考え方や技術は他の何に使えるのか。

[日時] 619日(土) 18:30〜21:00
※終了後、会場近くにて懇親会を開催します。(希望者のみ)
懇親会…21:00〜23:00 会費3,000

[会場] 大阪産業大学 梅田サテライトキャンパス(大阪駅前第3ビル 19階)

地図を表示

[参加費] 一般1,000円 学生500円(当日、会場にてお支払いください。)

[内容] 各パネリストによるプレゼンテーション(近作について)、パネルディスカッション

[参加パネリスト]
・吉永健一(吉永建築デザインスタジオ)
・河原司、中川晴夫、笠嶋彩子(Architect Taitan
・田中淑恵、内藤玲子(SWITCH建築デザイン事務所)
・香川貴範、伊藤立平、岸上純子(SPACE SPACE
・家成俊勝、大東翼、赤代武志(dot architects
・玉井恵里子(tapie
(順不同、敬称略)

[コーディネーター]
・山崎亮(studio-L

[参加申込み方法]
氏名・性別・年齢・所属・懇親会への参加有無を記入の上、下記メールアドレスまでご連絡ください。折り返し、事務局より参加のご案内をいたします。
申込み締切:2010615日(火)
申込み先:hozsympo@gmail.com
短縮URL:http://hoz-pro.org/member/symposium.html (チラシをダウンロードできます。)

[主催] ホヅプロ実行委員会
[協力] 大阪産業大学、studio-L

architecture for humanity TOKYO 設立準備会

architecture for humanity TOKYO の設立準備会についてのメモ。
すべて未確定ながら少しずつ進める予定。

参加メンバー
・山崎亮(studio-L代表)=afhT設立準備会代表
・西山浩平(エレファントデザイン代表)=afhT設立準備会副代表
・品川八峰(レバレッジ)
・曽根田香(studio-L)
・近藤佳奈(武庫川女子大学学生)
・筧裕介(hakuhodo+design)
・保利真吾(鹿島建設)
・辻琢磨(403 architecture共同主宰)

2010年5月17日月曜日

architecture for humanity TOKYO + KYOTO

先日のキャメロン・シンクレアとの話し合いを受けて、architecture for humanityの東京支部と京都支部の設立準備会を立ち上げることにした。大阪支部は京都支部と同じでいいか、分けたほうがいいかを考えるべくとりあえず保留しておくことにする。

東京支部は僕が代表を務めることとし、副代表をエレファントデザインの西山浩平さんにお願いした。そのほか、散歩クラブに参加していた東京在住の方が何人か参画してくれるとのこと。studio-Lの曽根田香が事務局を担当することになった。

※その後AfH本部の日本での活動体制が整ったため、事務局が行ってきた日本のAfHの窓口の役割等をすべて本部に移行しました。(追記:2011年6月17日)


京都支部はまだ代表などが決まっていないものの、近藤佳奈さんという女性が中心となって進めることとなった。京都と大阪の仕分けがどうなるのかはまだ決まっていないが、まずは京都の建築家でこの種の活動に興味がある人にはぜひとも参加してもらいたいと思っている。

「architecture for humanity」の活動は世界中で行われているが、僕たちがやろうとしているのは東京での問題や京都での問題に対して建築に何が可能かということを考え、実践すること。大阪支部が立ち上がっても同じことを目指すだろう。

とはいえ、まだまだ立ち上がったばかりでいろんな協力者の参加が必要である。下記、architecture for humanityのホームページをみて、その活動に賛同する人がいたらぜひともホームページに記載されている連絡先までご連絡いただきたい。

architecture for humanity
http://architectureforhumanity.org/


architecture for humanity TOKYO と KYOTO を立ち上げようとしているメンバーたち。

2010年5月16日日曜日

Design like you give a damn

先日、キャメロン・シンクレアが来日したとき、彼が出版した『Design like you give a damn(ほっとけないデザイン)』という本の翻訳出版について相談した。社会の課題に取り組むデザイナーの仕事を世界中からかき集めて、そのうちの88事例を紹介するという本。水の問題、エネルギーの問題、病気の問題、戦争の問題、ホームレスの問題など、課題を鮮やかに解決する事例が続く魅力的な本だ。

すでにこの本を一度すべて訳した僕としては、ぜひとも日本語で出版して日本のデザイナーにもこの内容を知ってもらいたいと考えている。とある出版社が興味を持ってくれて現在アメリカの版元と調整しているが、アメリカ側からなかなか返事が無い。

ということで、キャメロンからもアメリカの版元に話をしてもらうようお願いした。彼も何度か担当者に連絡しているそうだが、なかなか対応しないらしい。小さな出版社で対応できる人がいないのではないか、という話になった。

もしどうしても紙媒体で出版できないのであれば、キャメロンが持っている写真等を使って日本語でレイアウトしなおし、電子媒体で出版してもいいのではないか、という案も出てきた。iPadの登場でいよいよ電子書籍も本格的な市場をつくりそうだ。それを見据えて、紙に載せない刊行の方向性についても検討したほうがいいのかもしれない。いずれにしても、キャメロン自身は日本語でこの本の内容を紹介することには全力で協力するとのこと。早く日本のデザイナーに紹介したい本である。


「アメリカの版元がぜんぜん対応してくれないんだ」と悩むキャメロン。

ちなみに、エレファントデザインの西山浩平さんも同書を自身のホームページで紹介している。注目する人は早くから注目しているものである。
http://www.cuusoo.com/magazine/books_27.html

2010年5月13日木曜日

慶應大学SFCでのレクチャー

慶應大学の一ノ瀬先生のゼミでお話することになりました。
UST付きの公開講義にしていただけるとのことですので、興味のある方はご参加ください。
いろんな方と会えることを楽しみにしています。

題目:人口減少時代のランドスケープデザイン

日時:2010年5月27日 16:30-18:00(事後に懇親会あり)

場所:慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)カッパ館11号室

建築、ランドスケープデザイン、土木、グラフィックデザイン、まちづくりなど、人口増加時代に分化した職能のあり方に対して、人口減少時代はどんな働き方が求められるのでしょうか。ランドスケープデザインを軸にしつつ、建築やグラフィックデザインやまちづくりや政策づくりやイベント運営など、さまざまな仕事が求められるようになってきたプロセスについてお話したいと思います。動物でもあり鳥でもあるコウモリのような働き方を模索してみましょうw。

短縮URL:http://qurl.com/d3pwl

2010年5月9日日曜日

キャメロン・シンクレアとの散歩@明治神宮

昨日から来日しているキャメロン・シンクレアを誘って、朝の明治神宮で一緒に散歩した。以前から、エレファントデザインの西山浩平さんらと一緒に画策している「東京散歩クラブ」なるものの第一弾として、気心の知れた友達たち10名程度と一緒に歩きながらいろんな話をした。

この散歩にキャメロンを取材しているNHKの方々も同行したいとのことだったのだが、明治神宮内は事前に許可を得ていないとカメラを入れることができないとのことだったので遭えなく断念。神宮前で待機してもらった。

明治神宮内を散歩しながら、studio-Lが日本でやっていること、キャメロンが世界で取り組んでいることなどについていろいろ話をした。また、キャメロンが主宰する「architecture for humanity」の日本支部を都市ごとにつくりたいという話があったので、僕たちにできることとしてその支部を立ち上げる準備を進めると約束した。とりあえず東京支部、京都支部、大阪支部の3つを立ち上げるべく、準備を進めようということで盛り上がった(キャメロンは早速ツイッターでその盛り上がりをつぶやいていた)。


明治神宮の空間構造についてキャメロン・シンクレアに説明する。


散歩参加者とともに簡単な朝食を食べる。

明治神宮を出てきた僕たちとNHKの人たちが合流し、みんなで一緒に表参道を歩く。表参道駅まで歩きながら、日本の3つの支部は日本ならではの課題に取り組むこと、「architecture for humanity JAPAN」ではなく「TOKYO」「KYOTO」「OSAKA」など、都市や地域ごとに支部を作るのがうまいことなどを確認しあった。

これまた楽しくなりそうな話である。

2010年5月8日土曜日

キャメロン・シンクレア@ペチャクチャナイト

サンフランシスコから友人が来日するというので東京へ。どうやら「MISSION」というNHKの番組が、彼の活動を取材しているそうだ。その友人というのはキャメロン・シンクレアという建築家。サンフランシスコを拠点に活動している。彼が設立したNPOは「architecture for humanity」という名称。人道主義のための建築、といった意味だろうか。難民や災害など、世界中で起きている社会的な課題に対して、建築は何ができるのか、ということを考え、実行している人間だ。

ちょうど一年前、サンフランシスコのオフィスに会いに行ったときのことはこのブログにもアップした(http://studio-l-org.blogspot.com/2009/05/blog-post_29.html)。その彼が東京へ来るというので、久しぶりに会いに行くことにした。今日は六本木のスーパーデラックスで開催される「ペチャクチャナイト」にて、ハイチでの取り組みをプレゼンテーションするという。以前から「ペチャクチャナイト」の話は聞いていたが、想像以上に面白い取り組みだった。建築家がこの種の活動を展開することに共感した。また、この活動の主催者であるクラインダイサムアーキテクツとキャメロン・シンクレアが友人だということも当然のことだと思った。

キャメロンは1年前とほとんど(あるいはまったく)変わっていなかった。変わったことといえば、プレゼンテーションに使う機材がiPadになったことくらい。しかし、活動内容はさらに大きく進化していた。社会の課題に対するワールドコンペの主宰、オープンアーキテクチュアーネットワークによる復旧事業のサポートをはじめ、個別の災害復旧プロジェクトに世界中の仲間を集めて取り組んでいた。

僕たちも博報堂さんと「issue + design」という取り組みを続けている。僕たちの場合はそれだけをしているわけではないのだが、日本で何かキャメロンとコラボできることが無いか探してみようと思った。