2008年9月23日火曜日

メモ

経済学者、松原聡氏(東洋大学教授)の言葉。

「(人口減少や少子高齢化によって)社会構造が転換するなかで、予算も公共事業から福祉サービスなどへシフトしなければならないのに、まったくできないでいる。これも、自らの省の利益(予算、組織、定員など)を維持したい官僚と、その予算にぶら下がる政治家、そして業者、こういった既得権のスクラムが妨害してきたからである。この既得権のスクラムを壊さない限り、真に必要なところに予算を回すことなどできるわけがない。このスクラムを壊す作業が構造改革なのである。だから私から見ると、財政出動派があまりに安易に民営化の必要性などを提起しているのが不思議でならない。」(『人口減少時代の政策科学』より)

「財政出動すれば旧構造に資金が流れ、それが維持されてしまうということだ。公共事業費が建設業を支え、その建設業が選挙で与党を支える。結局、財政の出動が政官業のスクラムを維持することになってしまうのである。財政出動すれば一時的には当面景気は回復するであろう。しかしそれが長続きしないのは、バブル崩壊後の景気対策で130兆円(事業規模)もの資金がつぎ込まれながら、結局本格的な景気回復が実現しなかったことからも明らかである。むしろその財政出動で旧構造が維持されてしまい、構造改革は頓挫する。財政出動と構造改革は決して両立しない。緊縮財政と構造改革こそが同じメダルの表と裏なのである。」(『人口減少時代の政策科学』より)

人口減少時代には、社会構造がダイナミックに変化することになる。それに対応しようと思えば、人口増加時代のシステムを改変する必要がある。しかし、増加時代のシステムには既得権が発生しているため、これを改変しようとすれば当然抵抗が生じる。だからといって改変を留まっていては、人口減少時代の先にある未来が暗いものになってしまうだろう。なんとしても旧来のシステムを改変しなければならない。ではどうするか。旧来のシステムに対してお金を流さないようにすればいいのである。

旧来のシステムの代表格が公共事業への財政出動。特に建設業は末端までに多くの人が関わっているため、ここを刺激すれば景気が回復すると考えられてきた。だからこそ公共事業を通して建設業界にカネが流れ、その見返りに当選する政治家が生まれる。この流れを断ち切るために、建設系公共事業にお金を流さないようにすればいい、というのは正論である。福祉サービスが必要だとわかっているのに道路や橋をつくってしまう体質を何とかしなければならないのである。

さて、建設業界から抜け出すべきか。それとも、建設業界の内部にいて有効なお金の使い方を提案すべきか。公共事業といっても無駄なことばかりではないということを主張すべきか。本当に必要なことはまだまだあるんだ、と叫ぶべきか。しかし、この業界にお金が流れている限りは、旧来のシステムを生きながらえさせてしまうことに加担し続けてしまうことになる。一寸法師のように内部から体制を変えるといったシナリオは、結果的に鬼を肥大化させるだけなのかもしれない。ならば鬼の胃袋から外に飛び出して、ほかのフィールドで出来る限り社会貢献するほうがいい、ということになろう。

時代は変わりつつある。社会構造が変わり始めているのである。だからこそ、社会システムを変化させなければ、時代の変化に対応できない。この変化を促進するための仕事に携わるべきか。あるいは、この変化を鈍らせるような仕事に携わるべきか。答えは自明である。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

昨日今日とご苦労様でした。
いろんな話が出来て良かったです。
お話しした島根県邑南町で始まった地域
ブログです。
また覗いて見て下さい。
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今後ともよろしくお願いします。

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yamazaki さんのコメント...

uchibeさま、コメントありがとうございました。また、島根県でのご案内ありがとうございました。集落研究および対策については、さすが「先進地」だなぁ、と感心しました。ブログを見せてもらって、さらに勉強させていただきますね。