2009年5月24日日曜日

ダウンタウンからゴールデンゲートパークへ

 造成された公園としては世界一の広さと言われているゴールデンゲートパークへ行く。もともと砂地だったこの場所に、根気よく樹木を植え続けた人がつくりだした公園として有名な場所だ。その公園に近年2つの建物が建った。ひとつはヘルツォーク+ド・ムーロン設計のデ・ヤング美術館。もうひとつはレンゾ・ピアノ設計のカリフォルニア科学アカデミー。2つの建物は広場を隔てて向かい合って建っている。デ・ヤング美術館はヘルツォークらしくファサードの素材に凝った建物で、凹凸のある銅板に大小2種類の円形の穴を無数に空けて全面を覆った建物である。バーゼルにある鉄道の通信塔のときと同じく、風化によって徐々に色が変わっていくことだろう。銅板なので、徐々に緑色へと変化していき、周囲を取り巻く公園の緑と同化していくものと考えられる。中庭や展望台が併設されているのだが、それぞれ寄贈者の名前を冠したガーデンやタワーになっていて、公園のベンチなどを個人が寄贈するだけではなく、美術館の中庭やタワーを寄贈するというアメリカ人の発想に驚く。
 カリフォルニア科学アカデミーもレンゾ・ピアノらしく、エコシステムと建築の設備と空間の形態とを融合させたような建築である。外観は単に直方体のキューブに見えるが、なかには大きな球体が2つ入ったような構成になっていて、それぞれに個別のバイオスフィアをつくりだしている。この球体の頭が直方体のキューブから飛び出していて、屋上には2つのコブがある。この2つのコブも含めて屋上が緑化されているので、室内環境に配慮してあるのと同時に見晴らしのいい屋外空間を作り出している。
 その後、2つの建物の南側にある植物園へ移動する。植物園のセンターには、植物に関する本がかなりたくさん揃えてある。ガーデニングなどの相談に応じるために、スタッフも2名常駐している。緑のことならあそこに相談しよう、と思えるだけのストックがあることが重要であり、実際に多くの人が緑関係の調べモノをしていた。日本の植物園でも、緑関係の研究者の蔵書を寄贈してもらうなどして、植物に関する知のストックを進めるべきである。
この日は日曜日だけあって、園内のいたるところでさまざまなイベントプログラムが展開されていた。美術館と科学アカデミーとの間にある広場では、絵画や写真の展示販売が行われており、そのとなりではクラシックのコンサートが行われている。さらに離れた場所にある橋の上の歩道ではダンスレッスンが行われている。これだけのプログラムがいたるところで展開されていれば、休みの日に「ちょっと公園にでも行ってみるか」という気になるだろう。「公園にでも行ってみるか」という発想には、「何かやっているかもしれないから公園にでも行ってみるか」という期待感が込められている。この種の期待を日本の公園がつくりだせているかどうか。パークマネジメントの必要性を実感した。

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