イギリスにマギーズ・センターという施設がある。癌の告知を受けた人をケアする施設である。創始者はマギー・ケスウィック・ジェンクスという女性。自身が癌患者だった。病院建築の侘しさや心のケアの貧しさに憤慨して、1995年に設立したのがこのセンターだ。
第1号はイギリス北部の街「Edinburgh」にオープン。以降「Glasgow」に第2号がオープン、そして先日第3号が「Dundee」にオープンした。いずれもイギリス北部の街である。
すでにマギーは癌で亡くなっている。その意思を引き継いでセンターの建設を進めているのは、マギーの夫で建築批評家のチャールズ・ジェンクス。先日オープンした「Maggie's Centre Dundee」の設計は、ジェンクスの友人であるフランク・ゲーリーが担当。ゲーリーは施設の趣旨に賛同し、無償で設計を引き受けている。
メタリックな外観と木材を多用した内装。コンパクトな規模にまとめられた建築は「家」のような暖かさと親しみやすさを持っている。患者やその家族が情報を収集したり交換したりするためのスペースが用意されている。各種セラピーやエクササイズも行われている。
マギーが問題にしたのは建築のカタチだけではない。建築のカタチに加えて「心のケア」というナカミを問題にしている。換言すれば、それはプログラムや人材における質の問題である。建築の形態だけを突き詰める議論で見落としがちな「ナカミの質」という問題。僕らはカタチとナカミの質をバランスよく考える必要がある。至極当然のことだが、これが意外と難しいことなのである。
今後、マギーズ・センターは英国中に13の関連施設をオープンさせる予定。すでにダニエル・リベスキンド、ザハ・ハディッド、リチャード・ロジャースなどが設計を引き受けている。
Maggie's Centre Dundee
山崎
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