2005年3月20日日曜日

「郊外住宅地研究」

昼から(社)都市住宅学会関西支部の「都心郊外関係の新しい動き」というシンポジウムに出席する。

郊外住宅地の将来については以前から興味があった。シンポジウムでは、郊外住宅地の現在についての報告があった。報告された郊外住宅地の傾向は以下のとおり。

・総戸数が少ない郊外住宅地や駅から遠い郊外住宅地は、空き地/空き家の率が高い。

・子ども世代が戻ってこないため、住み継ぎはほとんど期待できない。したがって今後は空き家が増大するだろう。

・郊外居住者の3大不安要因は、①医療サービス、②防災や防犯、③家屋や庭の維持管理。

・かつて郊外居住者の永住意識は7割を超えていた。現在では5割を下回っている。ずっと郊外住宅地に住み続けようと思っている人が減っている。

・関東に比べて、関西の郊外住宅地は人口減少の影響が顕著に見え始めているのではないか。

具体的な数字やアンケート調査の結果を提示してもらえたおかげで、郊外住宅地の現状を多角的に把握することができた。ただし、研究の流れについてはいささか疑問が残った。郊外住宅地研究の常套手段は以下のようなものだった。

①調査対象住宅の概要把握
 人口の変化、周辺の環境、開発の変遷など
②現状の把握
 住宅地図による空き地/空き家調査、現地調査など
③アンケート調査
 現状の不満、将来の不安、将来の居住地指向
④今後の方向性
 アンケート調査に見られた不安を解消する方法を提示

現在住んでいる人の不満や不安を聞いて、それを解消する方法を提示するというスタンス。これでは新たな居住者を呼び込むことにならないだろう。50年後には現在の居住者の半数近くがこの世からいなくなるのである。そう考えれば、現在の居住者が抱える不安や不満を解消することが郊外住宅地の人口減少を止めることに繋がるとは思えない。住み継ぎが期待できない以上、新たな居住者をどう確保するのかという問題に取り組むべきなのだ。あるいは、その場所をどうやって自然へ戻すのかについて検討すべきである。

今日のシンポジウムのおかげで、郊外住宅地の現状はよくわかった。そして郊外住宅地研究そのものが抱えている問題点もよくわかった。次は僕が考える番だ。

山崎

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