2009年5月29日金曜日

アーキテクチュア・フォー・ヒューマニティへ

11時からクリッシーフィールドにて、ゴールデンゲート国立公園局のボスだったブライアン・オニールのセレブレーションに参加する。ゴールデンゲート国立公園局の管理責任者であったブライアン氏は、NPOとの協働をはじめ、地域の団体や青少年組織、学校など、いろいろな組織とのパートナーシップを駆使してパークマネジメントを展開した人である。残念ながら、5月14日に亡くなってしまったため、クリッシーフィールドでその偉業を称えるセレブレーションが開催された。

クリッシーフィールドに設置された仮設テントには2000人以上の人が集まった。パークマネジメントに関わった人が次々に壇上へ上がり、ブライアン氏の仕事を評価し、別れを惜しんだ。青少年協会、教育委員会、日本人協会、YMCA、ボーイスカウト、近隣の連合自治会など、さまざまな団体の代表者がブライアンとの思い出を語る。その都度ごとに、会場に集まった人たちのなかの関係者が立ち上がる。新しい代表者が出てくればくるほど立ち上がる関係者が増えていき、最後の代表者が話すころには会場に集まった全員が立ち上がって黙祷する。ブライアン氏がどれほどパートナーシップにこだわったのか、どれほどの人間と結びついていたのか、どれほど魅力的な人だったのかがよくわかるセレブレーションだった。日本にはまだこの種の人はいないように思う。国立公園管理局につとめながら、各種団体と結びついてパートナーシップに基づくパークマネジメントを展開し、多くの人から愛されたコーディネーター。この人の生き方に学ぶことはとても多いと感じた。

16時から福西氏と合流して、アーキテクチュア・フォー・ヒューマニティのキャメロン・シンクレア氏へのインタビュー。世界中で30以上のプロジェクトを動かすキャメロン氏は、忙しいにも関わらず長い時間を使ってプロジェクトの説明や今考えていることなどについて語ってくれた。特にキャメロン氏が考えていることについては、ここ数日、福西氏と議論してきた「デザインの社会性とは何か」ということとほとんど同じで驚いた。同時代的に同じ問題意識を違う国で持っているということの不思議さと力強さを実感した。この種の仕事をする場合、その内容がこれまでの職能からずれたものになるがゆえに多くの横やりが入る。キャメロン氏は、ガンジーの言葉を引用して、正しいことをしようとすると「最初は無視され、次に笑われ、次に戦い、しかし最後には勝つ」わけで、自分はこれまで無視され、笑われ、いまは戦っているところだ、とした。事実、キャメロン氏の取り組みについてフランク・ゲーリーと議論したことがあるそうだが、ゲーリー氏は「君のやっていることにはデザインのオリジナリティが無い」と批判したという。僕が思うに、キャメロン氏はデザインのオリジナリティなど求めていないだろう。そのデザインが誰の何を救うことができるのか。彼の興味はそこにあり、みんなが気づかなかった課題見つけだしてデザインによってそれを解決することができれば、その形にオリジナリティが無くてもプロジェクト自体はとてもオリジナルなものになると思う。キャメロン氏は「ゲーリー氏だって昔は無視され、笑われ、戦ってきた人だろうにね」と笑っていた。





18時からキャメロン氏の事務所を出て、キャメロン氏の事務所につとめる女性スタッフが紹介してくれたレストランに向かう。その前にダニエル・リベスキンドがリノベーションに関わったユダヤ美術館を少しだけ観て、久しぶりにアジア料理ではない夕食を堪能した。

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