午前中にサンフランシスコ市街を出て、バートにてバークレーへ。4th st.近くにあるランドスケープデザインの事務所MIGを訪れる。建物は5年前に訪れたときとほとんど変わっていない。全米各地に支店を持つ設計事務所で、所員の総数は約120人。バークレーにある本社には約60人が勤める。かつて動物試験所だった建物を買い取って改装したという事務所は、その特殊な用途ゆえに消毒とお祓いと改装をしたという。現在では、天井が高く開口部も多く、とても気持ちのいい空間になっている。ひとりずつが個別のブースで仕事ができるようになっていて、かなりリッチな職場環境だといえよう。
お昼から、MIGの代表であるスーザン・ゴルツマン女史と日系人スタッフのトッド・ハラ氏と3人でランチミーティングへ。4h st.のレストランで昼食を食べながらOSOTOの取材をする。屋外空間の意味、おもしろい活用方法、普段の屋外利用などについて興味深い話を聞くことができた。また、最近のMIGの作品を集めた「インクルーシヴシティ」という作品集やファシリテーショングラフィックに関する本や各種プロジェクトに関する資料をもらった。ゴルツマンさんはとても忙しい日々を送っているはずなのに、5年前も今回もとても丁寧に対応してくれる。ありがたいものである。
ランチミーティングのあと、4th st.周辺を散歩する。このあたりは大地主が一括して開発した通りであり、歩道と店舗との関係などが興味深い。地主自体が建築に興味がある人で、クリストファー・アレグザンダーの「パタンランゲージ」に影響を受けていたという。そこで、街路および建物の設計者に対して、パタンランゲージの法則にしたがって設計を進めるよう指示したようだ。建物は2階建てまで、歩道と敷地との境界はあいまい、街路を見下ろせる広場、点在するベンチやイスなど、とても気持ちのいい空間になっている。パタンランゲージの生みの親であるアレグザンダー自身が設計すると、どうしても彼自身の好みである古典的な建築様式が目立ちすぎることになるのだが、別の人がパタンランゲージを使うとここまで優れた空間ができるというのは驚きである。実際、これまで見たアレグザンダーによるパタンランゲージを用いたどの設計よりも優れた空間になっていると感じた。パタンをつくる人はそれなりのイメージを持っているため、そこに特定の様式がセットになってしまう場合が多い。他の人が作ったパタンであれば、その様式を引き去って新たな空間をつくりだすことができるという好例だろう。日本の都市空間が持つ優れたパタンを整理して、それを外国の設計者が忠実に守りながら設計すれば、いわゆる伝統的な和風の街路ではなく、新しいタイプの心地いい空間を生み出すことができるのかもしれない。
帰りにバークレー市街にある古本屋「モエブックス」へ立ち寄る。少し覗くだけにしようと思っていたのだが、日本で手に入らないような本がとにかく安い。SoleriやBAWAの作品集、ゲーリーのスケッチブック、スミッソン夫妻の論文集、ガレット・エクボに関する評論集、モダンガーデンに関する評論集、建築のダイアグラムに関する本など、興味深い書籍が安く売られていた。パオロ・ソレリについても、すでに絶版になっている珍しい著作がいくつかあったので、それらをまとめて購入した。重くて持ち運べなくなったので、翌日MIGから送ってもらうことにする。
夕食はバークレーの学生街にある韓国料理屋にて。やはり、1日に1食以上はアジア料理が食べたくなる。ビビンバとカルビを頼むと、それぞれがディナープレートになっていて明らかに2人前。またもや多く注文し過ぎたようだ。
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